コラム
COLUMN
派遣元が守るべき!人材派遣契約の重要ポイント ~リスク回避と信頼確保のために今すぐ見直したい契約実務~

人材派遣業を運営する上で欠かせないのが、派遣契約書の適正な整備と運用です。
「契約は毎回同じ雛形で済ませている」「先方から送られてくる契約書にサインしているだけ」
もしこのような運用をしているとすれば、重大なリスクを見落としている可能性があります。
日々の業務の中でつい見落としがちな項目を今一度見直す機会にしていただければ幸いです。
1, 派遣契約は「基本契約+個別契約」が原則
派遣契約は、一般的に以下の2つの契約を組み合わせて成立します。
基本契約書:継続的な取引関係の枠組みを定める(有効期間・損害賠償・秘密保持など)
個別契約書:派遣する労働者ごとの条件を定める(派遣期間・業務内容・派遣料金など)
この2つがセットでなければ、派遣法第26条に基づく記載義務が不完全となり、行政指導の対象になる恐れがあります。
2, 派遣元が押さえておくべき実務ポイント
① 派遣労働者の交代要請への対応
派遣先から「他の人に交代してほしい」と求められた場合、派遣元は労働契約上の整合性に注意しなければなりません。
無条件に交代に応じると、不当解雇や雇用トラブルに発展するリスクがあります。
【対応策】
☑派遣契約に「正当な理由がある場合のみ交代に応じる」と明記する
☑労働者本人への説明・同意を必ず得る
☑契約更新時に合わせて対応を検討する
② ハイリスク業務の従事ルールを明確に
金銭管理や車両運転、危険物取り扱いなどのハイリスク業務に派遣労働者を従事させる場合は、リスク管理が不可欠です。
【対応策】
☑派遣契約書に「派遣元の事前書面同意がない限り、ハイリスク業務への従事は不可」と明記する
☑事前に覚書を交わし、責任範囲や対応方法を明確にする
☑派遣先の保険加入状況の確認及び万一に備えた賠償責任保険への加入も検討
③ 損害賠償請求に備える条項整備
派遣労働者のミスにより派遣先が損害を被った場合、派遣元に損害賠償を求められることがあります。
ただし、通常の業務遂行による過失についてまで無制限に責任を負うことは適切ではありません。
【対応策】
☑「故意・重過失を除き免責」「損害賠償は派遣料金の○ヶ月分を上限とする」といった条項を契約に明記する
☑損害の大きさや事実関係を冷静に把握し、安易に責任を認めない
④ 派遣先による中途解約・契約非更新への備え
派遣先が業務縮小や能力不足などを理由に、契約期間途中での派遣打ち切り(中途解約)を求めることがあります。
しかし、これは派遣労働者の雇用安定に影響するため、法令上の規制があります。
【法令の概要(労働者派遣法第29条)】
派遣先は中途解約する場合、原則30日前に通知が必要
通知がない場合、派遣料金30日分の損害賠償が発生する可能性あり
【実務対応】
契約書に法令上の制限である
「中途解約はやむを得ない場合に限る」「通知は30日前までに」などの文言を必ず明記する
3,派遣元の信頼は「契約管理」で守る
契約書は単なる形式ではなく、派遣元としての責任と信頼を支える基盤です。
契約実務を見直すことで、以下のような効果が期待できます。
・トラブル時に自社を守ることができる。
・労働者の安心感と信頼が高まる。
・派遣先との関係性が安定し、継続的な取引につながる。
4,契約の整備と運用も、社労士がサポートします
社労士法人LIAでは、派遣元企業様向けに
・派遣契約書のチェック・作成支援
・覚書の整備とリスク管理指導
・労働者の就業管理・雇用調整対応の相談
・派遣事業許可や事業報告書の手続き支援
など、派遣業務全般のサポートを行っております。
☑「契約書の見直しをしたい」
☑「トラブルが起きる前に備えたい」
という方は、お気軽にご相談ください。